地球環境は、人類や地球に生息するあらゆる生物、生態系の基盤であり、企業活動は健全な地球環境無くして継続できません。
荏原グループでは、気候変動は世界が直面している重大な課題であると認識し、2019年にTCFDを支持する署名を行いました。ステークホルダーとの対話を通じて、気候変動に関する取り組みと情報開示の継続的な改善を行います。
2022年:オイル&ガス市場向け事業と半導体製造市場向け事業の気候関連シナリオを深掘りしました。
2021年:全事業包括的なシナリオ分析を行いました。
取締役会は執行側会議体を監督しています。代表執行役社長を委員長とするサステナビリテイ委員会では、気候変動に関する取り組みがE-Vision2030のマテリアリティの一つとして経営の重要課題であることを経営層全員で共有し、取り組み方針、行動計画の策定と進捗管理などを行っています。社外有識者もアドバイザーとして参加し、客観的な視点で当社グループのサステナビリティに対して助言を行っています。取締役も陪席して当社グループのサステナビリティに対する取り組みを監督するととともに、助言を行っています。サステナビリティ委員会の議論は、取締役会に報告し、レビューを受ける仕組みとしています。
また、リスクマネジメントパネルは短~中期的なリスクに対応しています。経営課題に対する行動計画の進捗管理を行う経営計画委員会では、財務面だけでなく、気候変動を含むESGに関する課題についてもモニタリングしています。
ガバナンスに関する情報(2022年)
2021年に開催したサステナビリティ委員会は、毎回、環境関連の議題を掲げ、カーボンニュートラルや環境マネジメントに関する当社の取り組み方針を検討しました。2050年カーボンニュートラル を当社グループとして目指すために、2022年1月にカーボンニュートラルプロジェクトを発足し、カーボンニュートラルを達成するための課題整理に着手しました。この取組みは、E-Vision2030のマテリアリティの1つである「環境マネジメントの徹底」の施策の1つです。スコープ1~3に亘って当社グループ全体の現状調査を行い、カーボンニュートラルに向けた中長期的な方針と施策を事業部門と調整し、推進体制を整備していきます。プロジェクトの進捗はサステナビリティ委員会に報告・審議されています。
また、サステナビリティ委員会はTCFD提言に基づく気候関連シナリオ分析の進捗を確認し、2022年下期から、建築設備事業、環境事業、社会システム事業について、各々の気候関連シナリオ分析を行うことを決定しました。
取締役会は、サステナビリティ委員会の報告を受け、執行側の状況を把握することで、監督機能を果たしています。取締役会として、特に「環境」と「社会」について監督の状況をさらに高めていく必要があるという認識の下、 2022年より取締役会において ESG、サステナビリティの議題を定期的に議論することにしました。その重要テーマの1つとして気候関連リスク・機会に対する取組みを掲げています。執行側の対応の具体化と推進に向けた議論を行い、サステナビリティ委員会にフィードバックする仕組みとしています。
TCFD提言に基づく2022年の気候関連リスク・機会に関する情報は、取締役会がサステナビリティ委員会から開示案の報告を受け、取締役において内容を確認した上で開示するプロセスとしました。
気候変動が当社グループの事業に及ぼす影響を以下のプロセスで検討しました。
2022年:オイル&ガス市場向け事業と半導体製造市場向け事業の戦略に関する更新情報
リスク・機会の抽出と評価 2022年更新情報
シナリオ分析 2022年更新情報
財務インパクト評価 2022年更新情報
対応策設定 2022年更新情報
2021年:全事業包括的な気候関連の戦略
2021年
2021年
2021年
2021年
2021年にTCFD提言に基づいて、全事業を包括的に情報開示を行った後、投資家の皆様との対話の中で、当社グループのオイル&ガス市場の気候関連リスクに対する分析の深掘りを期待するご意見をいただきました。当社グループのオイル&ガス市場向け事業は、ポンプ、コンプレッサ、タービンを中心に現在はLNG(液化天然ガス)関連施設やダウンストリーム領域(石油精製、石油化学品製造など)を主な市場としています。気候関連の要因で市場がどう変化し、当社の事業にどのような影響を及ぼし得るのかを検討しました。
一方、半導体製造市場向けの事業は、気候関連の機会・リスクをより精緻に分析することによって、GHG排出量の削減を含む日本国のSociety5.0の取組みや、電気自動車の普及、脱炭素を実現するための様々な製品や技術開発など、気候関連の機会の拡大に対する戦略をよりレジリエントにしたいと考えました。
オイル&ガス市場向け事業、半導体製造市場向け事業に焦点を絞り、それぞれの市場向け事業が気温上昇4℃シナリオ、1.5℃シナリオでどのような影響を受けるのかを分析しました。
2021年に開示した全事業包括的な気候関連シナリオ分析では、2030年を長期と設定して行いました。今回焦点を絞った2つの市場向け事業の気候関連リスク・機会の分析では、パリ協定や日本政府がターゲットとしている2050年を長期に設定しました。2050年からのバックキャストで当社グループのE-Vision2030「2030年のありたい姿」に向けた戦略を検討しました。
TCFD提言で示されている移行リスク、物理的リスク、機会に沿ってオイル&ガス市場向け事業と半導体製造市場向け事業の2050年までの気候関連リスク・機会を特定しました。
SASB,IEA,電機・電子業界気候変動対応長期ビジョンなどの信頼性の高い文献を参照し、当社事業に影響を与える可能性のあるリスク項目を抽出し、リスク・機会の重要度を評価しました。
リスク項目 | 重要度 評価 |
主なリスク・機会 | リスク | 機会 | ||
中分類 | 小分類 | |||||
移行リスク | 政策/規制 | 炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 | 大 | ・GHG排出に炭素価格がかかる。 ・当社主要生産拠点でGHG排出規制がかかる。 |
● | |
業界/市場 | 顧客企業・行政・市場の変化 | 大 | ・石油、ガス、アンモニアの需要動向が売上高や営業利益に影響を与える。 | ● | ● | |
物理リスク | 急性 | 異常気象の激甚化 | 大 | ・豪雨や台風により、当社主要生産拠点やサプライヤが被災することにより生産の停止が起きる。 | ● |
リスク項目 | 重要度 評価 |
主なリスク・機会 | リスク | 機会 | ||
中分類 | 小分類 | |||||
移行リスク | 政策/規制 | 炭素価格、各国の炭素排出目標・政策 | 大 | ・GHG排出に炭素価格がかかる。 ・当社主要生産拠点でGHG排出規制がかかる。 |
● | |
業界/市場 | 顧客企業・行政・市場の変化 | 中 | ・半導体需要増加に伴い、PFCガス削減需要が高まる。 ・EV,FCVの普及や、スマート技術・スマート社会の進展などにより、半導体需要が伸びる。 |
● | ||
物理リスク | 急性 | 異常気象の激甚化 | 大 | ・豪雨や台風により、当社主要生産拠点やサプライヤが被災することにより生産の停止が起きる。 | ● |
気候変動リスク・機会の抽出と評価(2021年)
重要度評価で特定したリスク・機会に対して1.5℃シナリオと4℃シナリオにどのような違いがあるのかを比較するために客観的パラメータを収集しました。
1.5℃のシナリオ(RCP1.9)はIEA* WEO**のNZE2050、2.0℃のシナリオ(RCP2.6)はIEA WEOのSDS、 4℃未満のシナリオ(RCP6.0)はIEA WEOのSTEPSを参照しました。
収集したパラメータやシナリオを基に、4℃シナリオ、1.5℃シナリオでは事業環境がどう変化するか。変化する事業環境の下で、当社、顧客、政策/規制、調達先がどう変化するか。更に、新規参入者や代替品の出現可能性についてシナリオを描きました。
*IEA : International Energy Agency:国際エネルギー機関
**WEO: World Energy Outlook
対面市場ごとの4℃シナリオ・1.5℃シナリオ
オイル&ガス市場向け事業、半導体製造市場向け事業の4℃シナリオ、1.5℃シナリオ
分析に用いた主なパラメータ
オイル&ガス市場向け事業、半導体製造市場向け事業の気候関連リスク分析に用いた主なパラメータ
シナリオ分析(2021年)
当社グループの財務情報や非財務情報、IEAや各国の公開情報、国際機関のデータベースなどを利用して、オイル&ガス市場向け事業と半導体製造市場向け事業が法規制、市場・技術の変化、物理的リスクによって受ける財務インパクトを試算しました。
気候関連のリスク及び機会が財務計画に及ぼす影響(2021年)
財務インパクト評価の結果を基に、気候関連リスク・機会に対する2050年までの対応策を検討しました。
気候関連のリスク及び機会を踏まえた戦略(2021年)
長期ビジョンE-Vision2030及び中期経営計画E-Plan2022の策定にあたっては、中長期的な社会情勢や市場環境の変動をシナリオプランニングによって分析しています。長期的トレンドとしての変動リスク、短期的なボラタイルリスク、対面市場・当社事業別リスクを特定しています。特定した機会・リスクは、コーポレートガバナンス体制の下で管理されています。
また、リスク管理部門が定期的に行うリスクアセスメントの結果に基づき、短~中期に直面する重要リスクを特定しています。このリスクアセスメントでは、想定し得るリスク項目を整理した中から、事業責任者・部門責任者へのアンケートとヒアリングにより、リスク対応体制を再評価し、主管部門を明確にして運用に反映しています。
中期経営計画E-Plan2022において、財務面、非財務面両方の経営課題に対する行動計画を策定し、その進捗を管理するための指標と目標を設定しています。非財務面の行動計画は、気候変動を含む、環境、社会、ガバナンスに関わるリスクと機会に対する指標と目標を設定しています。サステナビリティ委員会と経営計画委員会において進捗状況をモニタリングしています。
TCFD提言による 過去の情報開示
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